日本針路研究所

2011.8.6 講演会「原発事故の警鐘 和の母性文明への転換を」

2011年8月6日(日) 午後1時〜 文京区民センター3階C 参加費:700円
講師 村田光平さん 元駐スイス大使 地球システム・倫理学会理事
『原子力と日本病』朝日新聞社、2002年 著者

 3・11東日本原発震災の巨大な衝撃は、「原発安全神話」を完全に吹き飛ばし、脱原発への流れを創り出しました。脱原発移行期が始まったのです。多くの人たちが、これまでの生活スタイルや価値観を問い直さなくてはと考え始めています。エネルギーをどんどん消費して「快適な」生活を望むだけでよいのか、それではやってゆけないのではないか、何をどう変えたらよいのか思案しています。「原発文化」を超えるにはどうしたらよいのでしょうか。人間は自然とどのように向き合い、他人とどのような関係を創り出さなくてはいけないのでしょうか。
 講師に招いた村田光平さんは、1990年代後半にスイス大使を歴任され、現在は地球システム・倫理学会の常任理事をされています。早くから、〈脱原発〉を主張し、原発の存在を許しているのは、「責任感、正義感、倫理観」の欠如による「日本病」に起因すると鋭く批判し、3・11後には「力の『父性文化』を、和の『母性文化』へ転換する」ことこそが必要だと提起しています(『朝日ジャーナル』特集号)。
 国際的な会議の経験も豊かで含蓄のあるお話を聞いて、考えましょう。質疑討論の時間もゆっくりあります。ぜひ、参加しよう!

講師 村田光平氏
福島原発事故と世界の将来
 民亊、軍事を問わない核廃絶の実現へ

1 福島原発事故に思う
〈1〉 地球システム倫理学会の緊急アピール
〈2〉 国連倫理サミットと地球倫理国際日の創設
〈3〉 哲学としての天地の摂理
2 脱原発への展望
〈1〉 倫理と責任に欠ける原子力
〈2〉 浜岡原発の運転停止
〈3〉 保証できない再稼動の安全性
〈4〉 全原発の運転停止
〈5〉 世界への発信の責務
3 父性文明から母性文明へ
〈1〉 母性文化の着想
〈2〉 父性・母性両文化の比較(男性・女性文化との相違〉
〈3〉 トインビーの予言
〈4〉 オバマ大統領の役割
〈5〉 新文明の三つの方向
4 紛争解決に不可欠な母性思考形態
 これまでの発信の成果
5 民亊、軍事を問わない核廃絶と日本の役割
 核兵器も原発もない世界

講演する村田光平さん

報告

 広島の日、8月6日に、東京・文京区民センターで、日本針路研究所主催の講演会が開かれた。講演は元駐スイス大使の村田光平さん。テーマは「原発事故の警鐘 和の母性文明への転換を」。司会は村岡到。参加者21人。
 村田さんは、1996年から99年に元駐スイス大使を務め、99年に「環境問題はスイスに学べ、原発は危険だ」と私信を発信して話題となった。2007年には浜岡原発の稼働停止を求める全国署名を組織することを提起し、この署名は100万筆近くを集めた。2002年には『原子力と日本病』を著わした。地球システム・倫理学会常任理事を務めている。
 村田さんは、レジュメにしたがって、福島原発事故に思う、脱原発への展望、父性文明から母性文明への転換、母性文明の内実、民亊・軍事を問わない核廃絶と日本の役割、についてお話した。
 質疑討論では、スイスの特徴は何か、日本病の原因は何か、日本病克服の特効薬は何か、原発文化とは何か、科学万能信仰があったのではないか、などさまざまな論点が話題となった。
 母性文明の理解について、例えば、広島の原爆記念碑に「過ちはくりかえしません」と刻まれていて、それでは誰に責任があるのかが曖昧であるという批判も加えられているが、逆にその寛容の精神こそが大切なのだと説明した。バーミヤンの仏像が破壊された時にも仏教徒からは「犯人」を非難する声は上がらなかった、その意味を考えることが大切だと説いた。
 また、日本語では「母国」とは言うが「父国」とは言わない(英語だとfather land )、母校、母語もある。なぜ、日本語では「母」を使うのか、そこにも〈母性〉尊重の文化が示されている。
 織田信長の時代には、鉄砲の数が世界有数の量に達していたが、徳川時代になって、鉄砲の使用が減り、鉄砲の火薬を花火に活用するようになったという兵器の材料を文化に転用した話も興味深かった。  (村岡)