日本針路研究所

シンポジウム 領土問題の打開策を探る

2014年10月19日(日) 午後1時30分〜   明治大学研究棟2階第9会議室
報告
 岩下明裕さん (北海道大学教授)
 岡田 充さん (共同通信客員論説委員)
 若宮啓文さん (日本国際交流センター)
司会 高野 孟さん(ザ・ジャーナル主幹)
発言 荒井利明さん(元滋賀県立大学教授) 羽場久美子さん(青山学院大学教授)
主催:NPO日本針路研究所 明治大学・政治制度研究センター

 尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐる緊張が大きく報道され、竹島(韓国名:独島)も「北方領土」も係争点です。11月にはAPEC首脳会議が北京で開催され、ロシアのプーチン大統領の訪日も予定されています。
 領土問題は最重要課題の一つですが、なかなか打開策が見つかりません。集団的自衛権の行使容認などの軍事的対立の強化ではなく、〈友愛外交〉こそが求められています。この問題のエキスパートである3人のパネラーから問題提起していただき、打開策を探りたいと考えます。


「果実は万人のものであり、土地はだれのものでもないことを忘れるなら、それこそ君たちの身の破滅だぞ!」  ルソー『人間不平等起源論』1755年


岩下明裕さん
北方領土:現地の視座で考える

日本の領土問題をそのスケールで考えれば、99.9%が北方領土だ。だが世間の喧噪は尖閣に集まる。領土問題が人々の認識の問題でもあることを意味する。その解決策を「境界研究」の知見をもとに、世間の常識を解体し、境界地域の現実をヒントに再構築する。
参考資料 岩下明裕『領土という病 』(北海道大学出版会)

岡田 充さん
尖閣諸島:自治体で特区設定非国家化を

尖閣問題をめぐる関係国の主張をおさらいし、中国の真意がどこにあるかを探る。「安保のジレンマ状態」に陥っている日中関係を改善するため、3つの地方自治体(石垣、台湾・宜蘭、福建省)で島を「特区」にし非武装化し、3者による共同利用の可能性を展望する。
参考資料 岡田 充『尖閣諸島問題 領土ナショナリズムの魔力』(蒼蒼社)

若宮啓文さん
「竹島と独島 友情の島への夢想」再考

いっそ日本は竹島を譲り、韓国はこれを「友情の島」と呼ぶ。そんな夢想をコラムに書いたのは10年近く前のこと。せめて日韓をがっちり固めようとの戦略的夢想だったが、おかげで売国奴と叩かれた。その後の展開はどうか……。いま、領土問題の虚しさを考える。
参考資料 若宮啓文『右手に君が代左手に憲法』(朝日新聞社)

岩下・岡田・若宮の
  三報告めぐり充実した討論

 一〇月一九日、明治大学で「シンポジウム 領土問題の打開策を探る」が開かれ、次の三つの報告を中心に中身の濃い充実したものとなった。明治大学政治制度研究センターとNPO法人日本針路研究所が共催。参加者は六一人。
 まず、西川伸一氏(明治大学教授・政治制度研究センター所長)が開会挨拶。
・岩下明裕 北海道大学教授
 北方領土:現地の視座で考える  
・岡田 充 共同通信客員論説委員
 尖閣:自治体で特区設定、非国家化を
・若宮啓文 元朝日新聞論説主幹
 「竹島と独島 友情の島への夢想」再考
 司会は高野孟氏(ザ・ジャーナル主宰)
 討論の部で、発言として、荒井利明氏(元滋賀県立大学教授)と羽場久美子さん(青山学院大学教授)が話した。その後、質疑討論。
 最後に、村岡到(NPO法人日本針路研究所)が閉会挨拶。
 集会の後、会場を移して懇親会。
 岩下氏は、もともと地上には国境はなかったし、可変的であること、領土問題は政治的に作り出されていること、この「呪い」を溶かす道は、現地の人びとの目線から考えること、歴史問題と絡めないことが必要であると提起した。
 岡田氏は、尖閣諸島(中国名:釣魚島)について三つの地方自治体(日本・石垣、台湾・宜蘭、中国・福建省)で島を「特区」にし非武装化し、三者による共同利用する案を提起した。
 若宮氏は、竹島(韓国名:独島)をめぐる日韓両国の国民の意識の極めて大きなギャップがあることに注意を喚起、一九六〇年代には両国首脳が島の「爆破」を提言していた事実を紹介した。
 発言では、荒井氏は、領土問題解決のためにも鳩山友紀夫元首相が提案している「東アジア共同体構想」が有効で可能性があると指摘し、羽場氏は三つの領土問題を考える場合に、アメリカの外交政策が重要な位置を占めていること、戦争をふせぎ平和を創造するためには各国の市民交流が重要だと説いた。
 討論では、高野氏の要点を押さえた司会により、報告を深化させる意見交換となった。係争点の現地だけでなく、各国の市民交流の重要さに賛同する声とともに、「日本が譲歩したほうがよいという提案が続いたが、尖閣諸島を中国に譲れば、次は沖縄まで共同管理されてしまうのではないか」という疑問・意見も出されたが、それは余りにも非現実的な憶測にすぎないと明確に答えられた。
 村岡は、閉会挨拶で、北方領土問題への関心は四〇年近く前の第四インター時代からであり、ルソーやマルクスの言葉(人間は大地の所有者ではなく、占有者である)が解決の方向を示している、と結んだ。
 この種の企画がない中で一石を投じた。
 懇親会では、初めての出会いもあり、二五年ぶりの旧交を温める例もあり、和やかに歓談した。  (村岡到)