日本針路研究所

プランB No.36 2011.12

特集:編集委員と読者の提言

プランB No.36 特集:編集委員と読者の提言

ISBN978-4-904350-86-7 C0336
B5判64頁
定価800円+税
ご注文は針路研まで

Plan B No.36 目次

巻頭言「政党は市民の手足に」は間違いだ 村岡 到
特集:編集委員と読者の提言
『プランB』と市民活動 佐藤和之
縮小日本21世紀の道 深津真澄
他紙誌と一味ちがう魅力 佐藤三郎
「植民地主義」の負の遺産を直視せよ 斉藤日出治
諸勢力を繋ぐ貴重な媒体に期待 吉田万三
「北方領土」と日本・ロシア・アイヌ交流の歴史 吉田秀則
親友の死と共産党入党 野村 修
穀物文明を基盤としたマルクス思想の限界性 亀高照夫
村岡到さんに出会うまで 黒田長宏
『プランB』の魅力と問題点 大波慶苗
和の母性文明への転換こそ未来 村田光平
興味あり定期購読します 吉原 毅
ベーシックにふれた議論を 磯崎 新
編集委員を辞任します 早川由美子

農業、医療を破壊するTPP 拡がる反対の声を結集して阻止を
反格差デモの世界的な展開
ソ連邦崩壊20年シンポジウムの報告
市民連帯 総会と講演会 CS神奈川懇話会
脱原発移行期の攻防
高額供託金は憲法違反だ 縣 幸雄
三鷹事件の再審請求
精神医療の転倒と自然療法 吉越 勲
蟷螂通信33 他山の石
原子力の村で議員として市民として11 再稼働中止と廃炉を実現したい 相沢一正
税制の基礎知識 村岡 到
書評1  石川晃弘:著『体制転換の社会学的研究』
書評2  村岡到:編『青春70歳ACT─若者へのメッセージ』
合 評 (編集委員会) 
日本針路研究所第6回研究会の案内 本誌季刊化協力のお願い
この6年間の『プランB』『もうひとつの世界へ』主要記事 2005~20011年
編集後記

縮小日本21世紀の道
深津真澄
●日本の大地震と原子力災害は、科学技術の進歩に対する無垢の信頼を破壊し、大量生産と効率を旨とする資本制生産様式への疑問を突きつけた。ユーロ危機はドルの威信低下とともにグローバル化した経済の持続性に深刻な疑問を投げかけている。これらを合わせて筆者は、産業革命以来の世界の近代化が構造的行き詰まりを迎えた姿だと思う。8頁

「植民地主義」の負の遺産を直視せよ
斉藤日出治
●3・11の大震災を「第二の敗戦」と呼んで、かつての戦争が想起されましたが、そこには日本が近代の植民地支配と侵略の戦争を通してアジアの人びとに行使した犯罪行為は、脳裡の片隅にも浮かびません。ノノ戦争を被害として記憶し、今回の「第二の敗戦」からも立ち上がろうではないか、という内向きの呼びかけがそのあとに続きます。13頁

ソ連邦崩壊20年シンポジウムの報告
●塩川氏は最初に、この学会での講演を引き受けたが会員ではないのでと断り、理論家と歴史家との違いについて説明したうえで、歴史家としての話になると前置きした。豊富な知識に裏打ちされた講演で、ソ連邦の崩壊・解体について、何かの教条や事実に一元化して原因を見つけたつもりになる単純な歴史理解──「必然論史観」が大きな誤りであることを明確にした。
28頁 

高額供託金は憲法違反だ
縣 幸雄
●村岡到氏は「立候補権確立を」と主張しているが、「立候補権」という言葉は憲法にはないし、法曹界でも使われていない。しかし、チャレンジャーは、常に、新しいものに取り組み、世を切り開いていくものだから、この言葉の認知を求めて使用することは、大いに意味があると、考える。36頁

税制の基礎知識
村岡 到
●マルクス主義、あるいはマルクス主義経済学のなかで「税金」は重要な位置を占めていなかった。マルクス主義においては「税金」の重要性について認識が欠落していたのである。49頁
 世間で高い関心を拡げている問題について「タブー」にしたり、軽視・欠落させていたのでは、社会の多数派になれるわけはない。49頁

縮小日本21世紀の道  深津真澄

 高度成長が終わったころからだろうか、私たちは身の回りで子どもの数がめっきり減っているなと感じてきた。やがて、少子高齢化の到来と社会保障制度の維持が問題と指摘されるようになり、最近ではさまざまな業種の企業が国内市場の縮小に対処するため、アジア・太平洋諸国の企業を買収したり、本社機能の中枢部門の海外移転もためらわなくなっている。最近ではこうした動きは、欧州の統一通貨ユーロの動揺に誘い出された「超円高」によって加速されているのだが、経営者たちの多くが言い立てる「日本の法人税が高すぎるから」という理由は、原因のごく一部に過ぎない。
 私たち日本人は二〇一一年に、日本の行く手に現れた構造的危機の巨大さと根深さを否応なしに実感させられる局面に遭遇した。いうまでもなく三月一一日に発生したマグニチュード九・〇の巨大地震「東日本大震災」と、これに起因する東京電力福島第一原子力発電所からの災厄である。これと前後して、ギリシャの財政危機に端を発した「ユーロ危機」は、日本をふくめた欧米先進国の経済を揺るがし、中国、インド、ブラジルなど新興経済大国にも暗い影を投げかけて「第二の世界恐慌か」という不安を醸し出している。
 日本の大地震と原子力災害は、科学技術の進歩に対する無垢の信頼を破壊し、大量生産と効率を旨とする資本制生産様式への疑問を突きつけた。ユーロ危機はドルの威信低下とともにグローバル化した経済の持続性に深刻な疑問を投げかけている。これらを合わせて筆者は、産業革命以来の世界の近代化が構造的行き詰まりを迎えた姿だと思う。
 最初に子どもの数がめっきり減ったと書いたが、実は、そのことを端的に裏付ける統計が発表されたのは、つい最近である。一一年一〇月二一日に国立社会保障・人口問題研究所が発表した出生動向基本調査によると、子育て世代の夫婦が生涯にもうける子どもの数は「一・九六人」で、一九四〇年の調査開始以来初めて二人を割り込んだという。
 この調査はおおむね五年ごとに実施され、妻が五〇歳未満の夫婦約九〇〇〇組を無作為に抽出し、有効回答の中から夫妻ともに初婚の約六七〇〇組を選んで集計した結果だ。過去の調査結果では、二〇〇二年までの三〇年間は「二・二人」程度で横ばいだったが、前回の〇五年調査で「二・〇九人」となり、今回ついに二人を割り込んだ。その要因は「働く女性がふえて晩婚化が進み、経済状況が厳しくなったから」といってよかろう。
 出生数の指標では「合計特殊出生率」がよく知られており、従来の少子化問題ではこの数字が使われてきたが、こちらは未婚をふくむ女性一人が生涯に生むと想定される子どもの数を推計したもので、昨年は「一・三九」だった。こちらも少子化の傾向を占うのに役立つ統計だが、出生動向基本調査は子育て世代の実際のカップルがもうけた子どもの数を調べたもので、この調査の方が少子化の実態をよりよく反映した数字というべきだろう。いずれにしても、日本の人口が反転増加することはまず考えられず、二一世紀の日本は縮小の一途をたどるということが将来予測の大前提になる。本稿では、この大前提の下で日本の採るべき道を探ってみたい。
 日本の総人口が二〇〇五年の一億二七〇〇万人余りをピークにして、微減の過程に入っていることはすでに総務省の戸籍調査でも確認されているが、今後二一〇〇年までの九〇年間に全体としてどのような姿を示すのだろうか。この点については、国連が一一年五月に発表した「世界と主要国の将来人口推計」が参考になる。それによると、二一〇〇年時点の日本の総人口は九一三三万人と一億人を割り込み、二〇一〇年の人口より三五二〇万人の減少、率にして二七・八%の大幅減で、ウクライナ、中国についで世界第三位の減少ぶりと予測されている。
 一〇年時点で一三億四一〇〇万人で世界一の人口を抱えていた中国が、二一〇〇年には日本を上回る人口減少に見舞われ、四億人減(減少率二九・八%)という推計は意外な感じも与える。これは中国政府が改革開放に転じた一九七九年以降「一人っ子政策」を強行してきた効果であろうが、最近の急速な経済発展と社会変化の反映ともいえるだろう。中国では二〇一五年には生産年齢人口が減少に転じると予測され、国連の推計でも総人口は二〇二五年に一三億九一〇〇万人でピークとなるが、二〇代の性別比が極端なアンバランスを示すことになりそうだ。男性九六〇〇万に対し女性八〇〇〇万の比率で、社会的に大きな不安定要素をはらんでいるという。
 さて、人口規模で見た日本の地位は一九五〇年の世界第五位から一〇年は第一〇位、二一〇〇年には第一七位に落ち込むと予測されている。人口の規模がそのまま経済的国力を示すものではあるまいが、世界経済は一体化、グローバル化の度合いを強めている。経済大国としての日本の地位がジリジリ低下していく傾向は、人口規模でみた日本の地位に低下の趨勢にほぼ見合ったものになるのではないか。
 日本国内の経済動向からみても、人口がどんどん減っていく中で新たな「成長戦略」を描くことは困難であり、需要のじり貧を避けるために企業が海外に流出し、産業空洞化が進むことは避けられない。つまり、二一世紀の日本は新たな成長の機会に恵まれることは期待できず、雇用情勢はますます厳しくなると覚悟しておかなければならない。
 しかし、歴史的に見れば産業構造は時代によって変化していくのがむしろ普通の姿ではないか。七〇年代の前半には二度にわたる石油ショックが起き、鉄鋼や石油化学など高度経済成長を牽引してきた重化学産業は構造不況業種とされてしまった。しかし、現実には石油価格が高騰する中で、日本の企業はエレクトロニクスや精密機械など「軽薄短小」業種に活路を見出し、産業構造の比重を転換させ適応した。人口規模がどんどん縮小し、高齢化によって需要も減少していく一方なのに、これまでのように大量の自動車や家庭電器の輸出によって経済が維持できるはずはないのである。問題は産業構造の変動を前向きにとらえて、有利な変化の方向性を早く見出すことだろう。

 野田内閣は一一年一〇月から、米国が要求するTPP(環太平洋経済連携協定)交渉への早期参加をめざして関係国と協議に入ることを決めた。これに対して「協定参加は日本の農業に壊滅的打撃を与える」として与党内ですら強い反対運動が起きているが、私はTPPに託した米国の狙いは、農業ばかりでなくもっと幅広く医療、金融、公共事業などさまざまな分野で、協定参加国にアメリカと同様な制度に変えよと要求する足がかりにすることだと思う。TPPとは、九〇年代初めに自動車をはじめ日本製品の進出に悲鳴をあげた米国が、日本に執拗に迫った「日米構造協議」の再来だと思う。関税ゼロの自由貿易促進の建前に希望をつなぐ経済界は、協定への早期参加をせっついてきたが、近代化の構造的行き詰まりに有効な対策といえるのだろうか。
 少子高齢化で需要が減退する一方で、新たな成長戦略が見当たらない日本では、TPP参加に大きなメリットはない。むしろ、縮小日本が生き残るための数少ない戦略産業に仕立て直す可能性を秘めている農業に致命的な打撃を与える点で、TPP参加は有害というべきである。農業がこれからの戦略産業になりうると考えるのは、資源に乏しい日本の中で、唯一、自給とさらに輸出も可能な米作りが期待できるからである。農業者の劇的な減少と過疎化や高齢化による耕作放棄地の増大といった現象が昭和三〇年代から続いているにもかかわらず、一方ではコメの生産を抑制する減反政策が四〇年余り続いてきたことは、実は、稲作を拡大して戦略産業化する可能性を示しているのだ。
 日本産米は現在でもアジアに少量輸出されているが、この可能性はもっと大きく伸ばす余地がある。一つは地球の総人口が二一世紀末に一〇〇億を突破するとみられることから食糧難が起きれば、輸出拡大を望む声が大きくなるだろう。これまではジャポニカ種と呼ばれる短粒型の日本産米は外国では売れないとされていたが、「すし」の世界的普及はジャポニカ米も世界で賞味されていることを意味する。もう一つ状況証拠をあげれば、日本を訪れる中国人観光客が家電量販店で電気炊飯器を買い込む姿を見かけることが多い。中国でも粘り気が強く、柔らかに炊けるジャポニカ米を好む人がふえているそうだ。
 農林水産省もTPP対策のために「食と農林漁業の再生実現会議」を設け、水田農業の経営規模の拡大策や一次産品の付加価値を高める「六次産業化」の推進などの具体策を検討している。対策の中には再生可能エネルギーを農山漁村で展開することなども含まれるというが、これは当然だろう。筆者がいう農業の戦略産業化は稲作だけを重視するかつての重農主義的政策ではなく、農山村を再生可能エネルギーの生産拠点に変化させるとともに、地域の歴史や景観を生かした美しい田園都市づくり事業の推進も含めた政策を期待しているのである。
(ふかつ・ますみ/ジャーナリスト)

プランB No.43
終刊号:閉塞時代を打ち破る代案を!

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特集:農業の未来を探る

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特集:資本主導の近代化が抹殺したもの

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特集:ウィリアム・モリスをどう捉えるか

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特集:親鸞・共同体・真理

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特集:宗教と社会主義

プランB No.37
特集:脱原発運動の質的深化のために

プランB No.36
特集:編集委員と読者の提言

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論文号

プランB No.34
特集:脱原発移行期の課題

プランB No.33
特集:原発震災・農業・TPP反対

プランB No.32
特集:司法改革の課題

プランB No.31
特集:転機に直面する労働組合活動